科学の素晴らしさを教えていただいた、スティーブン・ホーキング博士に感謝を込めて

日本の雑誌だがNewtonという科学雑誌がある(名前からして英語圏の雑誌だとずっと思っていた。。。)。父親の会社が定期購読していたのか、小学生の頃父がよく持って帰って来てくれた。最新科学研究や技術の事を分かりやすいヴィジュアルと文章で説明しているもので、子供でも分かりやすく、また、興奮する読み物だった。男子なので宇宙は好きで、その時よく名前が出ていたのが、スティーブン・ホーキングだ。おかげで、相対性理論の概略は小学生の頃に知っていたと思う。読んではいないが、その時代に出版されていた本がまさに「ホーキング、宇宙を語る」で、彼が目指していた事が「子供にも分かりやすく(難しい数式等を使わずに)宇宙の事を説明する」だったので、僭越ながら、その目的は達成されていると言ってよいだろうと思う。

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科学雑誌Newtonの表紙の一例、このような表紙を見られた方も多いのでは

私が理系に進んだ理由は、彼の影響もあり「科学とはなんて不思議で面白く魔法のようなのだろう」と思ったからであり、Cambridge大学に興味を持ったのも、彼が在籍していたからでもある。

ご存じない方もいると思うが、スティーブン・ホーキング博士は難病を抱えながら76年を生き抜き、その間に宇宙物理学で類まれなる業績を示し、子供たちに夢を与えた方だ。初めて博士を見られた方は、失礼ながら、機械に囲まれ車椅子で現れる出で立ちに驚かれると思うが、そのような難病を抱えながらも素晴らしい業績を残された方だ。その生涯を知りたい方は「博士と彼女のセオリー」(英語版タイトルは「The Theory of Everything」、なんとお似合いのタイトルか!)をご覧になるとよいと思う。主演はハリーポッターシリーズのファンタスティックビーストでお馴染みの、エディ・レッドメイン(最初ベネディクト・カンバーバッチと記載していた、恥ずかしい。。)だ。

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ホーキング博士とエディ・レッドメイン

そのホーキング博士が亡くなったのが2018年3月14日。私がCambridge大学に入学する6か月前だ。娘が生まれた年でもある。ちなみに我々の結婚記念日も3月14日、円周率にちなんで。この日はアインシュタインの誕生日でもある。だから何だ?という話だが、ホーキング博士自身も「ビッグ・クエスチョン―〈人類の難問〉に答えよう」で「私はガリレオが死んだ日のきっかり300年後に生まれた。」と記載しているので、そういうことに思いをはせても良いだろう。

彼はCambridge大学のGonville and Caius College(ノーベル賞受賞者多数輩出のCollege)で、葬儀では「ケンブリッジの心臓部であり、世界で最も認知度の高い通りのひとつであるキングズパレードに沿って、ぎっしりと並ぶ群衆が目に入った。これほど大勢の人たちが、これほどしんとしているのを私は見たことがない。」と「ビッククエスチョン」にホーキング博士の娘さんの記載があった。MBA生でも一人このCollege所属の女性がいて、日本人だったので、Formal Fallに連れて行ってもらった。結構レアCollege(MBA生が少ないorいない)なので、雰囲気を堪能出来てよかった。

ホーキング博士所属の Gonville and Caius College の入口への献花
ご葬儀の様子

この「ビッククエスチョン」という彼の最後の本を読み、「やはり、素晴らしい人だったのだな」と感じた。是非ご一読いただきたい。

相変わらず専門家でなくても分かるように注意を払って記載されており(と言っても私が物理等を学んでいたから分かりやすい部分はあると思うが)、テーマ(クエスチョン)も面白い。一例として最初のクエスチョンをあげる。それは「神は存在するのか?」だ。私の拙い文章による誤解を恐れずに言うと、ホーキング博士の答えは「創造主は存在しない」だ。なぜなら、創造主が存在するのであれば、ビックバンを起こしたのは創造主であるが、ビックバン以前には時間が存在しないため、創造主という概念も存在しようがないから、ということだ(微妙なニュアンスや解釈の違いがあると思うので気になる方はご一読を)。何もないことから何かが起きるのだろうか?基本的に世の中の結果の全てには原因があるというのが論理的だろうと思う。が、実は今この時も、何もないところからエネルギー(物質と言ってもいい)が生まれており、それは突然だ。ただ、その世界は量子力学の非常に小さい世界の話である。ただしビックバンもそのスケールの話なので、矛盾はない。

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ビックバンの前とこの時空間の外には時間さえもない

ここで、相対性理論や量子力学を学んでいてよかったなと思うことが二つある。一つは「この世には、やはり絶対はない」ということが理解できることと、「世界が広がる」ということだ。二つは被る部分もあるが、1点目は、前述のように、原因があり結果があるのが当たり前でみな無意識にその文脈で仕事や生活をしている、特にロジカルなビジネスマンであれば尚更だ。しかし、それでさえ、この世の中では絶対ではない。その事が心底理解できることだ。2点目は、我々はどうしても自分が普段近くできる範囲で物事を考えてしまうが、この世には、その範囲では理解できない世界が存在することが改めて分かることだ。例えば、時間は連続して流れている(アナログ的)ように我々は感じるが、最近の研究では時間(と空間)の最小単位はプランク定数と呼ばれる極小の長さのようだ(デジタル的)。宇宙や量子の世界は、今人間の目の前で起こっている事とは異なる事が日々発生している。そういう世の中が現実にあるという事実を知るだけで、自身の世界を広げてくれると思う。

繰り返しになるが、そういう世界があることを教えてくれたのはスティーブン・ホーキングで、私の世界を広げてくれたのも彼だ。直接お会いすることは叶わなかったが、直接お会いしたところで、何も喋れなかったであろう( エディ・レッドメインも「憧れのスティーブン当人についに対面を果たしたとき、僕は打ちのめされた」、つまらない星座が一緒だという話をしてしまった、と言っている)。願わくば、今後の人生でスティーブン・ホーキング博士の業績に何かしらの形で関わる事が出来ればと思っている。

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