MBA外の人と交流しよう!:Venture Creation Weekend

2019年7月19日。このブログを記載している日であるが、寒い。。昨日とか日光が出てると中々暑さを感じるのだが、今日は曇りで日が陰ると寒くなる。ここら辺は日本と違って湿気がなく、カラッとしているからなのだろう。しかし、この寒気でさらにクーラーを点けなくても良いと思うのだが、そんな中、図書館では同級生のロシア人が半袖で作業している。ここら辺の感覚は今でもよく分からない。それは置くとして、7月なのに涼しく感じられるのは日本人としては幸せなのだろうと思う。日本を思い出すと、この時期はもう汗だく。。。

比較して、まだまだ寒かった3月にCambridge Judge Business Schoolで開催されるVenture Creation Weekend (VCW)というインキュベーション・プログラムに参加した。MBAコース内には組み込まれておらず、Judge内で開催されるイベントの一つだ。以前記載したが、Cambridge大学周辺はCambridgeが理系に強いということもあり、スタートアップが盛んなエリアだ。AmazonやMicrosoftも研究施設を構えている。そして、ビジネススクールとしてJudgeもEntreprenuership Centre を構えていて、そこの主催でVCWが年に3回開催される。今回のテーマはInnovation in Food Security であった。他にもIgniteという一週間のプログラム等、MBAコースとは直接関連のないEntreprenuership Programme がある。

このVCW、最初はよくあるWorkshop (社内研修やMBAコースでやるような1日起業体験コースみたいな)程度だろうと思って参加した。しかし、参加者はPos-DocやPhDが多く(Cambridge大学でない方も多い)、彼ら彼女らは自身が研究しているIdeaをビジネスにしたいと思ってきているので、自分達のIdeaに熱意を持っている。そこが一般的なWorkshopとは根本的に違った。

参加者は70人くらいか、Natural Science(理系)関連の研究者が多い、内MBA生は1割超えくらい

1日目は、Ideaを持っている参加者が簡単なプレゼンをしつつ、10個くらいのIdeaに絞ってチームを編成することに費やされる。そして、2日目と3日目は基本的にはIdeaのビジネス化で3日目午後の投資家向けプレゼンに備える。メンターとして実際の起業家や投資家が参加してくれて、1日に3回も相談する時間を設けることができる。

右下の方がメンターの一人

このメンタリングが結構良くて、聞けば確かにそれが当然重要(例えばMonetizeどうする、とか、最初顧客をどう取り込むとか、まぁBusiness Development(事業開発)の基本なのでしょうが・・・)とわかるが、聞かないと見落としている部分だ。そして、皆自身の経験から進め方を教えてくれる。例えば、Financingについて質問した時に「正直コストは大体見積もりが甘くなり、後から必要な物が分かることが多い。かといって過剰見積もっても投資家に受け入れられない」と言われた。結局アドバイスとしては、「今そこまで考えるより、定性的に魅力的なビジネスか」を考えた方が良いとのことだった。そして、当然だが、How Can I help?と聞かれるので質問は明確に考えてこなければならない。

この辺りMBA生として私が網羅的に考慮点をまとめないといけない部分ではあるが、まだまだである。しかし、MBAコースで学んだことを実際に考えて意見を言えるので良い機会だった。今回私のチームはMBA生が私1名だったのも非常に良かった。私が考えている間に他のMBA生に意見を言われてしまうこともないので、拙い英語でも議論がリードできたし、自分で考えるという機会も得られた。実際、Financial Modelingの経験はないが、私に任せれもらえて良い機会であった(どちらにしろやるしかなかったのだが)。

左3名の女性はCambridge大学在学(今回は真ん中の女性のIdeaを元にビジネスプランを作成)、右端の女性はドバイより、右の男性はインド人でチーム内で一番Maturityが高いと感じた

また、MBA外のメンバーとチームワークをするということも勉強になった。MBAの同級生は、私の英語スキルに配慮して最初から気を遣って喋ったり確認したりしてくれるが、今回はその点、私から直接的にお願いする必要があった。また、ビジネス用語やビジネス感覚についても考慮する必要があり、彼ら彼女らのIdeaを理解し、噛み砕いて、成果物に落としていく、というプロセスをもっとよく考えるいい経験になった。例えば、網羅的に考えるよりも、一つの事を突き詰める傾向にあるため、その場合、議論の方向修正が必要な事などだ。

今回のテーマが「食の安全」であり、我々のIdeaはCambridge大学のPos-DocであるErika Freemanの研究が元である。彼女の研究は食物の二酸化炭素排出量が分かるDatabaseを整備するというもの。ビジネスアイディアとしてはそれをユーザーに提供して、Eco-Friendlyな食物を選んでもらおうというものだ。正直、わざわざ二酸化炭素排出量が少ない食べ物をスーパーで選ぶか?と思ったが、リサーチすると、確かにUKでは敢えてそのような物を買うという傾向があるよう。環境への配慮が強いようだ。

表彰

それもあってか、我々のチームは投資家からの評価は全体の中の2位であった。本当にこのまま真面目に進めれて、色々な方達と相談をしていけば、ビジネスを始めることできるのではないかと思える内容だった。もちろん、そのためのハードルはたくさんあるだろう。また、今回参加したことで、これが全てではないと思うが、Ventureを社会へどう出していくかという部分、CambridgeのStartup Ecosystemの一部が垣間見れたことが良かった。これについては別途記載しようと思う。

メンター・セッション中の参加者


「男のロマン」の果て(?)イスラエル紀行(下):スタートアップ

ビジネス・スクールなんだから真っ先にこの内容を書くべき。なのだが、興味の範囲が歴史や国際関係偏重なので仕方ない(理系なので科学技術は言うに及ばず)。自己紹介にも記載したが、本棚はほぼ歴史の本で仕事関連の本なんかほとんどない。それにしてもなぜ歴史が好きなのだろうか。聞かれてもあまりちゃんと答えられない。帰国前に一度ちゃんと考えて、ブログに書いてみよう。MBAコースで記載したい内容が溜まりに溜まっているが。。。

本棚再掲

ビジネス的にイスラエルと言えばスタートアップだろう。個人的にはサイバーセキュリティー関連が多い気がしている。それは兵役があって、そこで学んだ技術を元に起業することができるからだと思う。ちょうど訪問時も、テルアビブ大学でサイバーセキュリティー関連のConferenceが開催されていた。前々回に記載したIBMが買収したTrusteerもサイバーセキュリティーの会社だ。正直サイバーセキュリティーは専門家でないと中々難しい内容である(ちなみに私は素人と専門の間くらいではあると思う)。例えば、いくらITセキュリティーに投資をしても、アメリカ、ロシア、北朝鮮、イスラエル辺りのサイバー部隊に本気で狙われたらどうしようもない。こうしている間も国家レベルで様々なサイバー兵器が開発投入されているのであろう。リアルタイムで攻撃のトラフィックを見ることができるサイトがあるので、一度見てみると面白い(MBAの授業で教えてもらった)。実際私の好きな出川さんがCMをしていたコインチェックの仮想通貨流出事件は北朝鮮ハッカーの攻撃であったようで、北朝鮮的には外貨入手のための方法の一つとして重要な資金源なのだろう。一方で、コインチェックのような中小企業がどの程度セキュリティーに投資すべきかは難しい問題ではないか。セキュリティー対策は際限がないし、ガチガチに固めたところで何の攻撃もないかもしれない。ガイドラインがあるのか、と思って探したら、あった。経済産業省が公開しているよう。とは言え、対策の程度は中々難しそうだと常々思っている。

リアルタイムのサイバーアタック状況 (2018年のある時期の例)

イスラエルに話を戻すと、スタートアップが盛んな理由は、兵役以外にも4つの重要な要素があるようだ。今回訪問したOur CrowdStartup Nation Centralでこの要素については同様なことを紹介してもらった(この二つの会社の取り組みについては後ほど)。まずはCulture(文化)。イスラエル人は合理的で果敢な文化精神があると言われている。これは前回記載した近代史からも建国間もない国としての生き残りをかけていた(いる)状況が影響しているのかもしれない。また、ネットワーキングの強さを指摘されることも多いが、これはユダヤ人コミュニティーの結束力の強さがそうさせるのであろう。2つ目はIDF(Israeli Defense Force:イスラエル国防軍)であるが、これは上記の通り(ちなみに同行した同級生のシンガポール人に「JSDFってさぁ〜・・・」って話をされてJSDFって何?って聞いたらJapan Self-Defense Force(自衛隊)のことだった、、そう訳すのか。。)。3つ目はImigration(移民)。イスラエルは移民をしっかり受け入れており、それにより多様性が育まれて、Ideaが生まれるそう。が、前回記載の通り疑問が残る部分ではあるし、これによる国内問題もあるのであろう。4つ目はGovernment Support(政府の支援)。Israel Innovation Authorityという政府のInnovation支援官庁があり、政府主導のアクセレレーター・プログラム等も盛んなよう。5つ目はLuck(運)。運は大事であろう。マキャベリもリーダーの資質に重要なのは「ヴィルトゥ(徳)」、「時代を読む力」、そして「運」だと言っていた。イスラエルの場合は、たまたま建国間もなく、たまたま紛争が多くて、たまたま技術力が上がった、のであろうが、それらを引き寄せた国内の力も見逃せない。(運の重要性は認識しているつもりなので、運についても自分の考えを整理して記載した方が良いかもしれない。。)

スタートアップ ネーションに繋がる5つの要素
イスラエルの国民一人辺りのスタートアップの数は世界一

さて、今回訪問した会社の一つであるOur Crowdは西エルサレムに本拠があり、Venture CapitalとCrowd Investing(クラウド・ファウンディンの一形態)を合わせた事業形態で展開している。よって、クラウド・ファウンディングを利用して、Our Crowdのサイトから個人でも投資ができる。ちなみに日本では投資型のクラウド・ファウンディングは事業者側には高いハードル(規制)があるが、出資者には規制がないよう。そして、Venture Capitalの役割も担うため、Our Crowd自身がdue diligenceを実施した品質の高いスタートアップが多いそうだ。

もう一つのStartup Nation CentralはNGOで、テルアビブに本拠があり、イスラエルのInnovationを促進するために各Stakeholderを繋げる活動を主に実施しているよう。サイトでは、興味に沿ってイスラエル内のStart-upを検索できるし、イスラエル内のスタートアップに関する調査結果を閲覧できる(要登録)。当然、前出のサイバー・セキュリティーだけでなく、農業(Ag-Tech)やインフラ(Water&Energy)も盛んであるよう。

イスラエルStartupの業界

一方で、最近はスタートアップ企業数などは減少してきている(させてきている側面も)。それは、スタートアップ企業は雇用に結びつきにくいので、政府がより規模の大きな企業の数の増加に政策転換をしてきているからだという記事も見られた。現地でお会いした日本人の方も「最近はスタートアップよりも巨大テック系企業の存在感が大きくなっています。エンジニア系人材の草刈り場になり、イスラエルのスタートアップの起業数は減ってきてるそうです。~~ 特にインテルのイスラエルの活かし方は抜群にうまくて、スタートアップの買収により新しい事業領域にはいると同時にイスラエルに経営資源も投下し、R&Dや事業開発の拠点化をしているように見えます。」という内容を記載されている。スタートアップが持て囃されている現在、つい華やかな世界に見えるが、大企業も(当然だが)重要な意味を持つのだなと思った。経済における大企業、中小企業、スタートアップ、それぞれの役割や意味についてまだまだ理解していないと認識した次第である。翻って日本(人)の事を見てみると、少し驚いたことに訪問時のPresentationの中で、日本のInnovation順位が意外にも低くないことが分かった。例えば、World Economic Forumによる調査によると、R&D Expenditureの対GDP比はイスラエルが1位で日本が3位。もう少し調べると、Research & Development全体では日本が1位でイスラエルは17位。さらに上位カテゴリーのInnovation Capabilityでは日本は6位でイスラエルは16位だった、1位はドイツ。ただ、やはり日本のStartupの数は少ないようだ。しかし、Innovation Capabilityがあって、それで本当にInnovationが起きているのであれば良いと思う。日本はもうInnovationが無いというのは穿った見方なのだろうか。

都市別のスタートアップ数ランキング、テルアビブが世界6位、日本の都市の名前はない

どのようにイスラエルと協業していくかと考えると、この大企業スキルを駆使するのが良さそうだ。同じ記事だが、「イスラエル人は、スタートアップ、ベンチャー、イノベーションに関心があり、得意であるが、辛抱や長期的企画、大規模な経営などは必ずしも得意ではない。それに対して、日本はスタートアップやベンチャーはあまり得意でないが、組織の大規模化や大量生産化は得意であると言えよう」との記載があった。イスラエル自体も漫画、食、だけでなくて、ビジネス的にも日本には興味があるようで、近々日本への直行便ができるそう。ただ、現在イスラエルが持つ日本への興味はスタートアップの買収元やFund資金であるように思う。実際楽天がViberを2014年に買収し、この楽天Viberが2015年にNextPeerを買収している。可能であれば、お金の面だけではなくて、国民性や技術力に興味をいただいていただき、その部分でWin-Winの関係になれれば一番良いと思う。

イスラエル紀行、長くなったが、歴史、現状、そしてビジネスと記載することで、これら3つは無関係ではなく、繋がって現在の経済とビジネス状況になっているのだなと理解することができたように思うのでよかった。旅行が終わった後に、ここまで調べたのは初めてだ。ただ、毎回このレベルでブログを書くことはできないが。。。