運命の女神とネットワークと

「運命!?運命などに俺の人生を左右されてたまるか。」(ラインハルト・フォン・ローエングラム)、「運命というならまだしもだが、宿命というのは、じつに嫌なことばだね。」(ヤン・ウェンリー)と中々嫌われている運命(宿命のほうが嫌われている・・・)であるが、「運命の女神は、積極果敢な行動をとる人間に、味方する。運命の神は女神なのだから。彼女に対して主導権を得ようと思うなら、乱暴に扱うことが必要なのだ。運命は、冷たいほど冷静に対してくる者よりも、征服したいという欲望を露わにしてくる者のほうに、なびくようである。」(ニッコロ・マキャベリ)や「運命の赤い糸」と言われるように、昔から気にされていた概念でもあるのでは。しかし「運命の赤い糸」に関しては、それを「運命」と言ってもいいし、「タイミング」と言ってもいいのではないかというのは結婚経験のある男女の共通見解ではないかと思う。私が話した範囲の既婚の方は男女問わずこの意見に賛成だった。つまり、付き合い始めるのも、お互いに彼氏彼女がいない状況で、そろそろ欲しいなと思うタイミングが合ったのであり、結婚もそれぞれの人生設計の中で今が良いというタイミングが合ったからであろう。極論すると(検証できないが)別のタイミングがあれば別の人と結婚をしていたかもしれない。そういう意味でいうと時間と空間の制約というのは改めて大きいなと思う。とは言え、そのタイミングで出会ったお互いが、一緒に時間を育んでいく事とその結果できたお互いの関係や思いはPreciousだと思う。だからこそ、一期一会、人の出会いや縁というのは重要だと言われるのであろう。

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みんな大好きフィレンツェの外交官、ニッコロ・マキャベリ。大学生くらいで彼の本を読むと、「うわ、かっこいい!!」と思うこと請け合い。

このような思いになったのは最近だ。大学生の時までは、ロジカルが全てだと思っていたので、運とか縁とかコネとか、訳のわからない物は悪だと決めつけていた。友達のことは大事にしていたと思うけれど。コネも全てが悪いわけではない。コネのおかげで当事者同士の信頼関係の構築がSpeedyになるであろうし、就職の採用側にとっては最初の篩いとしてコストを抑えられる。そこには当然、信頼する人を紹介するという紹介する側にも責任とリスク(紹介した人が紹介先であまりよい働きをせず、紹介元の自分のReputationが下がる、等)が伴うことが前提だ。コネだけで採用を決める必要はなくて、その後適切な面接をすればよいのであろう。逆にコネだけで採用される(してしまう)場合は結局すぐ辞めてしまったり、折り合いが悪い状況が続いたりという悪い話しか聞かない。

日本人はコネを使うのがあまりうまくないと思う。後述するが、留学時に私の周りにいた人達はネットワーキングがうまかった。一方で、日本ではそういう欧米のネットワーク(≒コネ)を使って旨くいっている表面だけを見て中身がないコネだけを頼りに利害関係が強い方に突っ走る場合が多いのではないか?私もまだまだコネの使い方は慣れていないので、しばらくは情報交換等のなるべく迷惑にならない形に止めたいと思っている。

MBA全般的に、またイギリス人(と言っても私の知っている範囲はEstablishmentだが)は、時間を共有した場での“たまたま”の出会いを大事にする。以前記載したImpulse Programmeで出会ったJamieはたまたまそのプログラムでチームが一緒になっただけなのに、私の話を真摯に聞いてくれたし、その後もちょくちょくやり取りがある。これは、彼がVenture業界にいるからかもしれない。別途記載したいが、私は今Corporate Venture Capital(CVC)でStartup関連の仕事をしている。この業界に入って、さらに出会い、タイミング、の重要さが分かる。例えばAIについてのStartupと協業したいと考える。理想的にはMECE(お互いに重複せず、全体に漏れがないに世界中のAI Startupを探索して、その中からベストな協業先を選ぶべきだ。しかし、技術の発展も早く、興隆の激しいStartup業界、調査している間に各々のStartupの状況は変わる。それならば、その時の、例えば何かのStartup Eventで出会ったそこそこ協業できそうな会社と始めた方がいい。もちろん、そこで出会ったStartupより協業可能性の高いStartupはどこかにいるかもしれないが、その会社に会えるかどうかも分からない。これが「出会い」が重要な所以だ。

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Docomo Ventures 2020のStartupブースの例

ちなみに、現職の日立製作所CVCのポジションは、採用ページにポジションが掲載されていて応募したわけではない。ポジションがないかどうか含めて「お問い合わせフォーム」から直接メールした結果だ。普通「お問い合わせフォーム」から採用が始まるケースはない。運がよかった、と言えなくもない。が、直接メールをしたのは何も現職だけではなく、他にも直メールをしたり、別の手を打ったりした結果である。他にも以前記載したJapan Trek企画時にはスタジオジブリの星野会長にお会いすることができたが、これも直接メールした結果だし、2009年頃に前職のIBM内でSKE48の講演をしたく会話したのも直接SKE48の事務所へお問い合わせフォームから直接連絡した結果だ。Cambridge MBAの先輩でアジア人で唯一のヨーロッパのサッカー放映権ビジネスを手掛けている岡部恭英さんのInterviewでもCambridge時代に「約100人のサッカー関係者と会い、最終的にはエバートン(イギリス)とインテル、ユベントス(ともにイタリア)からインターンの承諾を取り付けた。」とある。つまり、運を味方につけるには数打つ事(努力?もしくは行動?)が大事なのではないか?「宝くじが当たる人はたくさん買っている」と言われる。

運命の女神に見捨てられないように行動しつつ、うまく活用できたらと思う。